Picture of 鶴田 純久の章 お話
鶴田 純久の章 お話

陶磁器の製造工程中釉焼をすることを本焼といい、これに使用する窯を本焼窯という(素焼窯に対して)。
本焼窯には丸窯・古窯・円窯・角窯などその様式によっていろいろありますが、いずれにしてもこの焼成は他の焼成と比べ最も困難で、火焔の性質がはなはだしく製品の焼き上がりに影響するうえ、高火度焼成のため焼成方法が当をえないと熱の利き方が悪かったり、あるいは窯内の温度分布が不均一となり、窯中の器物を不揃いとなし、全工程を徒労にして経済的損害をきたすことが大であるので最も留意を要します。
磁器本焼操作は次の三期に分けられます。
第一期はアブリ(焙り)といい、酸化焔で焼成します。
第二期はセリといい、還元焔で焼成します。
第三期は焚上げといい、中性焔で焼成します。
第一期は素焼・締焼の要領と同じく、徐々に熱を上げて十分に水分を発散させ、窯室内の温度の平均に留意して焼成します。
これを窯壁の覗き穴より覗くと、だんだんに窯中が赤く見えるようになります。
この時を俗に煤切れといい、酸化焔によって当初燃料より生じた煤が残らないように焚き進め、そして次期に移るまでに窯内の温度をよく平均しておかなくてはならないようです。
第二期はまたセメ(責め)ともいいます。
釉がまさに熔けようとする頃より熔け終わるまでの間で、この間は還元焔で焼成し、特に燃料を多く焚き口に投じて焼成するためこのような名称が付けられました。
還元焔によって素地中に含まれた鉄分を還元するもので、鉄は酸化されると赤味を帯び還元されると青くなります。
赤味を帯びるのは白色素地に対しては呈色上好ましくないようです。
そのため青味を帯びさせるために還元焔で焼き進めます。
しかし初めから還元焔でしては素地中に浸透したカーボンがは焼け切れないで残って、黒くなりますので、初めは煤を切るように酸化焔でし、いよいよ釉が熔け始めたら還元焔とし、釉の熔けるまでに鉄を十分還元するものとします。
したがってこの期間は寸時の油断を許さず、もし一刻でも酸化焔ですれば、ただちに鉄は酸化されて黄味を帯び、このため素地面上に赤い汚い斑痕を現すために俗にこれを染みといい、また昔より酔うともいいます。
釉が熔けてからでは火焔はどうしても回復しないようです。
このように至難の焼成法をとりますので、この時期には到底窯中の平均をとるために各焚き口で投炭を加減することなど不可能ですから、窯中火度の均一をはかるにはアブリの時期に十分な平均をとっておくことを必要とします。
第三期においては釉は熔け素地も熔融かに近付いていますので、もはや還元の必要はなく、ただ熱を利かせばよいです。
そして窯内も相当に熱度が上昇しているので還元焔でしてもおのずから中性焔となります。
この期は中性焔で十分熱を利かし最後の焚上げをします。

前に戻る
Facebook
Twitter
Email