書名。一巻。今泉雄作著。
1891年(明治二四)4月刊。
その前年1月より古美術雑誌『国華』第四~十九号の誌上に連載されたもので、その体裁はかの朱琉の『陶説』に倣い、そこからこの名称となりました。
内容は二部に分かれ、第一は説今の部で、陶冶法として采土製泥・錬灰配釉・製造匝鉢・円器修模・円器拉坏・琢器倣坏・土蒔築窯・初窯倣素・棟選青料・青華絵器・蕪釉塗釉・成坏大窯・焼坏開窯・円琢伝彩・明知の各項に分けて述べられ、製具諸器の図を示し、さらに楽薦造法を付しています。
次いで各州今窯の項には各地方所産のやきものの名称を列挙し、合わせてその土・釉についても記載しています。
第二は説古の部で、まず原始の項において上古陶器の諸相を説き、古窯考の項にて古瀬戸をはじめ全国の古陶数十に及ぶ中古並びに近古のわが国の陶器を品評しています。
そのほか中国・朝鮮などの陶器についても名を挙げています。
最後に古窯年表として1223年(貞応二)の藤四郎の渡宋より享和年間(1801-4)の加藤民吉の瀬戸磁器開創までを掲げています。
その内容は必ずしも適切であるとはいい難いですが、当時における異色ある陶磁文献として一顧の価値があります。
因みに本書は今泉雄作の著作のようになっていますが、実は明治初年に東京の陶工として聞こえた竹本隼太の手記によったともいいます。