やきものの製作工程はその品種および精組などによって一定でありません。また窯業地によっても工程に異同がありますが、その操作を大別すると土の調製、成形、釉の調製および施釉、焼成、着画に分けることができます。以下はその概略。
【坏土の調製】坏土の原料は土石を主とします。土には純粋な磁土や諸種の粘土があり、石には長石・珪石・ペグマタイト・石英粗面岩・花崗岩・石英斑岩その他があります。このほか珪砂・骨灰・石灰石・白堊なども使用され、これらの原料中磁土あるいは粘土は、坏土に可塑性を付与しその成形を可能にするもので、坏土の骨子をなすものであふるいり、いずれの陶磁器中にもこれを含有します。坏土中粗雑な炻器・陶器あるいは土器類にあっては、粘土が単味より成るものも少なくありません。また天草石のような、石英粗面岩の分解から成り、その中粘土質分・石英分・長石分の三者を含有し、単味で上等な陶磁器の坏土となりうるものがあります。
しかし多くの坏土はその可塑性・融和性・耐火性・色合いなどを調節するために数種の原料を混合して調製します。土の調製をするには原料中の塊状のものをまず粉砕する必要があります。粉砕器には、各種の機械があります。粗雑な品物の製造には、原料である粘土類を水しないで採掘したままのものを捏練したり、単にこれを篩にかけて粗粒を除去し、その後水を加え捏練して坏土とし、上等器物の製造にはいずれもこれを水して使用します。しかしいずれの場合でも採掘した粘土はただちに処理しないでひとまず貯蔵しておくのがよいです。坏土の調製は多くは泥漿状にしますが、原料を乾燥状で調合したのち水するものもあり、乾燥状で調合しのち混水細磨するものもあります。またまれに全部乾式法を用いて坏土の調製をすることもなくはありませんが、普通の場合は調製した土はいずれも泥漿状をなすため、その過剰水分を除去する必要があります。わが国在来のこの水分除去法は、泥漿を素焼製の大甕、あるいは上端で幅約九〇センチ、長さ約一・八メートルの長方形で下部を幾分漏斗形に狭くした深さ六〇センチないし九〇センチばかりの漏水溜め内に入れ、水分を漏出させるものです。この漏水溜めは四周を竹あるいは木桿で囲い、その内面に茣蓙や蓆類を張り、底には砂を敷き、その上に陶板を並置します。こうして泥漿が濃泥となったらさらにこれを吸鉢という摺鉢形の素焼製鉢に盛り、あるいは素焼製の平瓦に載せて天日に晒し適度の固さにするのです。しかしこの方法によると、操作中に、坏土中に塵埃が混入し不良のものにするばかりでなく、雨天の際は容易に水分を除去することができません。このため最近は西洋の方法に倣い圧搾除水機を使用するものが漸次増加しました。坏土が除水され適度の固さになればこれを捏練します。捏練は昔は一般に工人の手足によったり、あるいは杵でついたものでしたが、最近は捏練機を使用します。捏練器には種々あって普通に使用されているものは円筒形土練機や転輪土練機です。そして有色の土には全部鉄製のものを使用することができますが、白色の土に使用されるものは鉄の部分が直接に土に接触しないものであることを要します。通常円筒形土練機は有色坏土の捏練に使用され、転輪土練機は上等な白色坏土の捏練に使用されます。
【成形】坏土が仕上げられるとこれを用いて器物を成形します。成形法には手製作・模型製作・轆轤製作があります。手製作はなんらの機械を用いることなく手工のみによるものです。模型には木製・土製・素焼製などがあるが最も多く使用されるものは石膏型で、特に強圧を要するものは金属製を使用します。その用法による種類には鋳込型・撫出型押型などがあります。轆轤には手轆轤・蹴轆轤・機械轆轤などがあります。
【釉の成分調整および施釉】釉の成分には長石や天然産の長石質岩石の単味を使用するもの、長石質岩石に石灰分を加えたり、石灰質と石英分とを加えるもの、また土灰と灰を混合した灰釉も用いられています。石灰分には通常石灰石大理石・白堊・灰を使用します。また釉の熔融度が高くないものでは前記の原料に唐の土・密陀僧・鉛丹のような鉛化合物、あるいは硼砂・炭酸アルカリ・硝石などのアルカリ化合物その他を混用します。低温釉はこれらを主として硅石類を添加しますが、この場合鉛化合物のような水に不溶性のものはそのまま混合できますが、アルカリ塩類のような水に溶解性のものは他の原料の一部と共にあらかじめ熔融し、いわゆる白玉(フリット)という一種のガラスをつくり、水に不溶性となし、再びこれを細粉して混和する必要があります。また釉の有色のものの調製には、天然に鉄分などを含有する土石類を使用するものもあるといいますが、多くはなお呈色剤を混合するものとし、呈色剤としては普通はコバルト・マンガン・銅・鉄・ニッケル・クロム・アンチモニー・チタニウム・ウラニウムなどの化合物を使用します。釉を調製するには、あらかじめ各原料を粉砕し、さらにこれを水簸し泥漿状で混和するものや、粉砕した原料を秤量混和し、さらに磨臼あるいはトロンメルのような粉砕機を用いて細磨するものもあります。釉にはまれにその組成分中に粗粒子の存在を必要とするものがないわけではありませんが、一般に粒子はできるだけ微細であることを要します。釉を施すにはこれを泥漿とし、そのうちに器物を浸して付着させるのを最も普通とし、器物の多くはこの方法によって施釉されますが、大器物や素焼を施さない脆弱な器物でこの方法により難いもの、色釉の塗り分け、斑掛けなどのような特種の目的の場合には、吹き掛け・流し掛け・塗り掛けなどを行なう。吹き掛けは霧吹き器を用いて釉漿を器面に吹き掛けるもの、流し掛けは釉漿を器物に流被するもの、塗り掛けは刷毛あるいは筆を用いて釉漿を塗布するものです。そのほか揮発釉というものもあり、窯中で器物の焼成がまさに終わろうとする際、揮発性アルカリ化合物のようなものを焚口あるいは火床内に投入し、その揮発によって器物に接融し、坏土と化合してその表面に一種の釉皮を成生させるものです。
この方法は主として土管あるいは炻器に応用されるもので、揮発剤には普通食塩を使用します。
【焼成】陶磁器は必ず焼成を必要とします。焼成には素焼・本焼・焼・釉焼・焼付などの種類があります。素焼とは本焼以前に、つまりまだ施釉しないうちに先立って施行する弱い焼火で、その主要な目的は器坏の気孔性を増し施釉を容易にすることと、その堅牢度を増し施釉窯詰その他の操作中破損の憂いを少なくすることにあります。ことに粘土の性質によっては生素地に釉掛けのできないものもあるので素焼が行なわれます。その火熱は一般に摂氏八~九〇〇度といいますが、まれには有田磁器のように摂氏一〇〇〇度以上を必要とするものもあります。本焼とは器物が受ける最強熱度で施釉後に施行されるもので、施釉前になされる本焼を締め焼といいます。締め焼を受けたものは、施釉されてのち釉を熔融させるためにさらに締め焼よりも弱火で焼火されます。これを釉焼といいます。締め焼にはあらかじめ素焼を行なうことはありません。すなわち器が焼成されるには、第一種―最初弱火で焼き施釉を経て強火で焼くもの、第二種―最初強火で焼き施釉後弱火で焼くもの、第三種―素焼を行わないで単に本焼のみを行なうもの、以上の三種があります。ヨーロッパおよび日本産のたいていの磁器、および粟田焼薩摩焼・布志名焼などの陶磁器類は第一種、硬質陶器・骨灰質軟磁器・マジョリカ陶器などは第二種、中国磁器・会津焼磁器および粗雑な陶器・炻器類の多くは第三種に属します。本焼および焼の火熱度は陶磁器の品質により一様でなく大いに差があります。その概略の範囲を挙げれば、最高は本焼で摂氏一四五〇度内外、締め焼では一三〇〇度内外とし、最低は両者ともに1150度内外です。焼付とはすでに焼成された器物上に彩画を付着させるために施行する焼火で、釉上に彩画を施さないものにはこれを行なう必要はありません。焼付の火度は顔料の性質によって一定でありません。普通摂氏一〇〇〇度内外とし低いのは800度位ですが、七〇〇度以下のものもあります。焼成にはいずれも窯を使用します。窯には種類が多く、わが国で従来使用してきた本焼窯は、傾斜地に築設された数室を連接したいわゆる登窯という半連続焼成窯であり、その様式の概要は一定とはいえその細部の構造上には多少の差異があり、丸窯・古窯などが含まれます。しかし丹波の蛇窯、常滑の鉄砲窯は一室のみの長い窯です。ヨーロッパの本焼窯には諸種の角形窯などがあってもその大部分は独立した垂直円筒窯で、その様式には一室・二階・三階のものがあります。火焰進行の状態からすれば倒焰式・昇焰式があり、燃料の点からすれば薪材窯・石炭窯があります。過去にはいずれも昇焰式で燃料に薪材を使用したものですが、現在では主として倒焰式とし、特種な目的をもつもののほかはいずれも石炭・ガスを使用しています。このほか燃料にガスを使用する十数室を連接した連続焼成窯があり、また連続焼成式軌条窯を磁器焼成に使用することもあります。締め焼窯には一般に本焼窯と同種のものを使用し、釉焼にも主として円筒窯を使用しますが、あるいは大形のマッフル窯を使用することもあります。素焼には、わが国では特に素焼窯という特種な独立窯を用いることもあり、あるいは登窯の一室を利用することもあります。西洋では一般に円筒窯の上層を素焼用とし本焼焼成の余熱を利用しています。焼付窯はまた絵付窯・絵窯ともいい、その様式は種々あるがいずれもマッフル式で火焰を直接器物に触れさせないようにしています。熱源によって類別すれば薪材窯・石炭窯・ガス窯・電気窯があり、形状からすれば角窯・円筒窯があり、焼成上からすれば不連続焼成窯・連続焼成窯があり、連続焼成窯中には数室を連続並置して焼火点を移転させるもの、あるいは一室で焼成器物を逐次移動させるものがあります。要するに陶磁器中には本焼のみを受けたもの、素焼と本焼、あるいは締め焼と釉焼との二焼成を受けたもの、さらに焼付を受けたものがあります。焼付は顔料の性質によって二焼成することも少なくありませんので、陶磁器中には単に一回の焼成を受けたものから三、四回の焼成を経たものまであります。
【着画】陶磁器には装飾のために彩画を施します。この絵付には釉上と下があり、釉下は特種なものを除けばほとんど染付であり、釉のために熔着されるのでことに焼成を必要としません。釉上を上絵付、単に絵付といいます。一般には本焼あるいは釉焼ののちに施すものですので、彩画後これを釉面に付着させるためにさらに焼成をなす必要があります。彩画の方法には筆画・印刷画があります。印刷画中には型紙印刷画・銅版着画・石版着画があります。
以上詳細は各項参照。