花押 かおう

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鶴田 純久の章 お話

記号若しくは符号風の略式の自署(サイン)で,判(はん),書き判(かきはん),判形(はんぎょう),押字(おうじ)などともいいました。
花押の起源は自署の草書体にあります。これを草名(そうみょう)とよび,草名の筆順,形状が到底普通の文字とはみなしえないまでに特殊形様化したものを花押といいます。

 花押の発生は中国にあって,その時期は遅くも唐代中期と見られています。日本の花押も中国にならって用い始めたと考えられ,その時期は遺存史料の限りでは10世紀前半期ころのようである(933年の坂上経行の花押が初見)。
 花押には、(1),自署,草名から起こった草名体(例えば三蹟(さんせき)の一人藤原行成)のほかに,(2),諱(いみな)(実名)の偏,旁(つくり),冠などを組み合わせて作る二合(にごう)体(例えば源頼親,源頼朝),(3),諱(いみな)の一字又は他の特定の文字を形様化した一字体(例えば平忠盛の〈忠〉,足利義満の〈義〉,足利義政の〈慈〉,豊臣秀吉の〈悉〉),(4),動物(鳥がよく用いられる),天象等を図形化した別用体(例えば三好政康の水鳥,伊達政宗のセキレイ,大陽義冲の大陽)などがあります。平安時代には草名体,二合体が多く一字体も間々用いられましたが,鎌倉時代以降はほとんど二合体と一字体が用いられ,別用体はごく一部の武士,僧侶(そうりょ),文人の間に用いられたにとどまります。

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