高さ8.3cm 口径25.3cm 底径14.8cm
菖蒲手黄瀬戸という言葉は、この作品によって生まれたものときいています。深い見込いっぱいに一株あらわされた菖蒲の文様が、あまりにも鮮やかなために人々の印象を深め、この手の焼成りのものを、文様が菖蒲でなくとも菖蒲手と呼ぶようになったものらしい。鐸状に広がったロ縁を複弁の輪花に形どった平らな大きな鉢で、一見銅鑼に似ているので俗に銅鑼鉢とも呼ばれています。大根文、花文様の鉢とともに黄瀬戸のなかではもっとも大きな作振りのものであります。一株の菖蒲を線彫りであらわしていますが、葉にどっぶりと塗った.胆礬は濃く鮮やかに焼き上がり、縁には花唐草を線彫りし、鉄と.胆礬で彩っています。底は碁笥底式で円形に浅く削り込まれ、釉形の置跡が焦げています。大作のわりに薄手に成形され、手取りは意外に軽い。黄瀬戸のなかでは強烈な作振りの名品であります。