古月軒 こげつけん

鶴田 純久
鶴田 純久

古月軒と称されるものは、中国清朝の窯器中最も珍稀なもので、最も高価なものであります。
同時代に模造されたものもまた高価であるといわれます。
それがいかなるものであるかについてはすこぶる異説があって鮮明を欠く。
1)古月軒は乾隆帝の禁中にあった軒名で、その磁器に描いた画家は名を金成、字を旭映といいます。
2)古月軒とは、胡という姓の者がいてガラス器に絵を描くことが巧みでありましたが、乾隆の御窯でこれに倣ってつくったものであります。
3)古月軒とは清朝宮廷内の軒名で、もっぱら乾隆帝だけには属さないようです。
歴代精製の器は等しくこの軒に蔵しました。
以上の三説のいずれが真であるかは不詳。
それでは古月軒の宝物はどのようなものかというと、その地肌は普通の磁器と異なり純白であたかもガラスのような感があります。
その器は花瓶・皿・鉢の類もありますが、たいていは大きなものはなく数センチに過ぎないものが多いようです。
描絵は繊麗巧緻であたかも洋画のようでありますが、少しも華獅に流れず気品が高く、またすこぶる気の利いたものであります。
款識は天青の堆料款で、多くは乾隆年製の四字款でありますが、また雍正年製あるいは大清乾隆年製の六字款もあるといいます。
したがって古月軒という款識のあるものはみな真物ではないといわれます。
いずれにしてもこれらの款識はその字体・輪郭ともに極めて精整で、規矩を用いて引いたようであります。
(『匋雅』『陶磁』六ノ五)

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