中興名物。藤四郎春慶茶入、塞手本歌。
越路ともいいます。
加賀侯がこれを所持していた時、小堀遠州が北国の意を表わして命名したといいます。
口造りの捻り返しがやや深く、甑下が張り、肩面は狭く、胴はむっくりと膨らみ裾に至ってまた狭まる。
胴中に太い沈筋一線を巡らせ、黒ずんだ金気釉の上に柿金気釉がむらむらと掛かり、置形は柿金気色が濃く二筋流れ、一筋は胴筋の上、一筋は裾土際に至って止まる。
裾以下は鼠色土をみせ、底は輪糸切が少し擦れて鮮明さを欠いています。
内部口縁の釉掛り以下は琥植が巡っています。
地色は沈んだ方なので一見して華美ではないが、その形は円満福相の茶入であります。
加賀前田侯の所持で、中根壱岐守に贈られ、壱岐守より将軍家光に献上、再び中根氏に賜わり、のち大島肥前守、阿部豊後守を経て享保年中(1716-36)に細川越中守の所有となり以来同家に伝来。
(『古今名物類聚』『名物記』『麟鳳亀龍』『大正名器鑑』)