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鶴田 純久の章 お話

やきものを分類して土器・陶器・炻器・磁器に大別します。
炻器は素地が不透明で気孔性がなくおおむね有色であります。
無釉のものも有釉のものもあります。
気孔性のない点で陶器と区別し、不透明の点で磁器と区別します。
炻器という語は1907年(明治四〇)頃技術家の選定した語で、炻はその際の新造字であります。
この種に属するものはその範囲が広く装飾品も実用品もあります。
実用品としては建築用品・厨房具・衛生用器・化学用品・土管など。
炻器の素地は多くは粘土一種で、時には二種以上の粘土を混合します。
原土のままのものがあるようで、水簸したものがあるようで、また特に耐火性不粘質物を混合したものもあります。
普通はゼーゲル錐8番内外に焼成されますが、低熱度において炻器となるものがあります。
素地原料は粘土なので可塑性を有し、それゆえ耐火度は十分で焼成の際歪曲せず、また密度も十分で使用に堪えないものはないようです。
わが国における炻器の産地は相馬・益子・笠間・常滑・万古・信楽・丸柱・温故・伊部・萩・高取・高田などであります。
炻器の実用品には時に化粧土を掛けて下絵を施したものがあるようで、彩料にはコバルト・花紺青・マンガンークロムなどを用います。
通常素焼を省きます。
釉薬は食塩釉が多く、鉱物釉では石灰釉・長石釉・灰釉・ブリストル釉など。
わが国では灰釉を用いることが多いようです。
例えば白萩釉・あく釉・来待石釉・海鼠釉などであります。
装飾用炻器の素地土は主として水簸粘土でありますが、これにカオリン・長石・石英・素地粉を加えることは珍しくないようです。
素地の色は普通灰・黄または帯白でありますが、濃褐色もあります。
釉薬の多くは石灰釉でまれに鉛釉をも用います。
素地を素焼し下絵付・色釉・上絵付の装飾を行いました。
化粧土を施すこともあるようで、まれに伊部焼のように食塩釉を施すこともあります。
ちなみに青伊部は鉄の還元によるものであります。
装飾用炻器はいわゆる精炻器と区別し難いものが多いですが、ただ素地土がやや粗粒であります。
精炻器は精陶器および磁器と同様に素地がこまかいです。
磁器との差は透明性を欠き帯色している点にあります。
精炻器はイギリスにおいて最も発達しました。
通じて炻器の窯は地方によりまたその製品の種類により形を異にします。
わが国在来の窯は古窯に似ているがこれよりもはるかに低くかつ小さいものもあるようで、また勾配が急で焼成時間が短いです。
(『実用製陶学』『大日本窯業協会雑誌』二四四『陶磁器工業』『北村弥一郎全集』)

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