名物。真中古茶入、大覚寺手。
金沢河合栄次郎所持、のち大阪村山家に人りました。
(『茶道名物考』)
はつかり 初雁
瀬戸真中古窯茶入、大覚寺手。
名物。
銘の由来は明らかでありませんが、おそらく釉景の中に雁の飛行する姿に似た模様のあることから付けられたものでしょう。
伝来も雁に縁の深い加賀に伝わり、同地河合栄次郎が所持しました。
その後しばらく尾州に移りましたが、近年村山家の有となりました。
口造りはやや厚手で、捻り返しは浅いです。
肩はかっきりと衝き、胴は上部でふくらんで裾へ向かって次第にすぼまり、全体としてむっくりした感じの肩衝形を呈しています。
特徴はその釉景にあり、総体に柿金気釉地の上に黒飴釉と黄釉が入り交わりつつ飛雲のように随所にかかり、その中で一カ所特に黄釉が勝ち、甑際から釉際まで流れ下がって、裾で濃くなり光沢を増して置形をななめせんうたかたしています。
以下に露われた土には金気が多く、三段の面をなして底に至り、底は輪糸切をみせています。
底の中央が少し窪み、小さな石を噛んでいます。
『戸田一玄庵名物一覧』に大覚寺手名物として「泡沫」「比丘貞」とともに列挙され、松山青柯著『つれくの友』によれば、明治三十五年十一月二十九日河合栄次郎茶会に用いられていることが記されています。
【付属物】蓋 仕覆―二、萌黄地滑銭金襴・白地小牡丹金襴(図版右より) 家-花櫚、書付小堀大膳政之(遠州流二代目)筆内箱―白木、書付小堀権十郎筆
【伝来】金沢河合栄次郎 尾州某村山家
【寸法】 高さ:74 口径:(内)3.4、(外)4.0 胴径:7.2 高台径:4.5 重さ:160
【所蔵】香雪美術館