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鶴田 純久の章 お話
灰釉 双耳瓶
灰釉 双耳瓶

Ash glaze pottery vase with two handles. 9th century. Height 36.5cm.
9世紀
高さ36.5cm 口径9.2cm 胴径26.4cm 底径16.5cm
 肩の両側に、小孔を有する扁平な耳を付けたいわゆる双耳瓶は、8世紀後半から10世紀にかけて全国的にみられる器形の一つです。
 西日本および北陸では口頸部がラッパ状に開く長頸瓶を基本形としているのに対して、東海地方のそれは短い小さな口頸部であって、地域差がはっきりと現われています。東海地方の双耳瓶は8世紀末ごろ猿投窯において、原始灰釉陶器として発生しました。初期のそれは小孔を有する三日月型の扁平な耳ですが、8世紀末には耳が長くなり、9世紀には上端が屈折して角ばった耳に変化します。肩が稜を描いて屈折するのもこの時期の特徴です。全期を通じて平底で、高台はありません。
 本器は9世紀はじめごろの猿投窯産灰釉陶器であり、現在知られている双耳瓶のなかではもっとも優れたものです。白色の耐火度の高い良質の土を用い、酸化焰に近い中性焰で焼かれていて、猿投窯独特の淡い褐色の火色が器面に現われています。口頸部から肩の全面に施された黄緑色の灰釉が胴の半面に流下し、本器の大きさと相俟って、堂々たる風格を見せています。

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