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鶴田 純久の章 お話
渥美 刻文壺
渥美 刻文壺

Atsumi ware: jar with incised ornament. Excavated from Nyohōdō Sutra Mound, Gongen-yama, Shingu-shi, Wakayama. 12th century. Height 29.3cm.
和歌山県新宮市権現山如法堂経塚出土
12世紀
高さ29.3cm 口径12.3cm 胴径23.3cm 底径12.5cm
 常滑の特色の一つが三筋壺にあるとすれば、渥美の特色をこの刻文壺に求めることができます。小形壺の肩に平行沈線で各種の文様を描いた刻文壺はそれほど定型化されており、数多く焼かれています。
 それらの刻文壺のなかでもこの壺は最も完全な、質の高いものです。肩におそらく半截竹管で描いたと思われる平行沈線を三段に設け、その間を結んで八の字風の文様を千鳥に配しています。素地は渥美特有の砂質に富んだ粗い土で、紐土巻き上げ成形、器形は横ナデ整形を施しています。やや外開きになった口頸部の尖端を外方に折りまげ、断面三角形の口縁帯を設けています。焼き上がりは良く、灰褐色の器肌を呈し、肩に黄褐色の自然釉がかかっています。渥美窯産刻文壺の最も典型的なものです。

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