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鶴田 純久の章 お話
猿投 経筒外容器
猿投 経筒外容器

Sanage ware: covered jar for containing sutra case. 12th century. Overall height 33.9cm.
12世紀
総高33.9cm (蓋) 高さ8.5cm 径23.1cm (身)高さ26.6cm 口径21.0cm 台座 25.0×25.0cm
 形態や文様から推して経筒外容器かと考えられますが、出土地は明らかでありません。これとまったく同一のものがもう一個知られています。蓋は上部に低い円筒紐のついた形で、 内部が抜けており、 蓋の用をなしません。さらに上になにかを被せたものでしょうか。蓋の肩の愛曲部に二本の沈線をめぐらし、その間に複線鋸歯文を入れています。
 身はやや胴張りのある円筒形で、上端に蓋受けのかえりを設けていあります。底部は一辺25cm 厚さ1cmの方形台座を設けており、四隅を截って3cmの面をつくっています。従来の経筒外容器にはまったく類をみない異形のものです。胴には上中下三段に平行沈線をひき、上の空間内に太い箟彫りで牡丹の花弁を七個連続させて描いています。花弁の俯瞰図四個、側面図三個を交互に配し、太い茎で結んで連続させています。この経筒外容器の時代や産地が改めて論議され始めた昭和四十八年、名古屋市東山植物園内にある東山第105号窯から、これと同じ素地で、二重沈線の間に牡丹唐草文を刻んだ大形壺の破片が発見され、この外容器が同窯の産であると推定されるにいたりました。同窯は灰釉陶器から山茶碗に移行する過渡期のものであり、年代は12世紀初めです。従来類をみない異形の外容器ではありますが、その焼成窯が知られたことは稀有の例に属します。

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