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鶴田 純久の章 お話
猿投 経筒外容器
猿投 経筒外容器

Sanage ware: covered jar for containing sutra case. 12th century. Height: cover 8.5cm., jar 26.6cm. Aichi Prefectural Ceramic Museum.
12世紀
(蓋)高さ8.5cm 直径22.2~23.1cm (身)高さ26.6cm 口径21.0cm 胴径24.2cm 底径25.2cm
愛知県陶磁資料館
 猿投 経筒外容器に示した経筒外容器とまったく同一のものであり、おそらく同じ遺跡から出土したものでしょう。胴を三条の平行沈線で分割し、上二条の沈線の間に牡丹の花弁の俯瞰図を描き、そこから蔓を派生させて花弁の側面図を連ねてゆく文様を描いています。箟描き沈線で描く手法は平安灰釉陶以来の日本的な手法であるが、沈線の間に大きく牡丹文を描き出す文様のパターンは中国宋代の青磁 白磁のそれをまねたものです。
 .この経筒外容器の産地が猿投窯であろうことは発見以来いわれてきたところですが、図117のところでも述べたように、名古屋市東山植物園内にある東山第105号窯から同様な文様を描いた大形の壺片が出土しており、素地 釉調も同様であるところから、同窯と断定しうることになったのです。このような陰刻花文は10世紀後半以来の猿投窯において盛んに用いられた装飾手法であるが、11世紀中ごろにいったん途絶しており、12世紀初めに本器のように再び出現したところに大きな意味があります。前代の文様が唐末五代の四弁花文の模倣であったのに対して、この新しい花弁文様および表現手法は明らかに宋代のものであり、中国陶磁の模倣ながら再び花文陶が焼かれ出したところにその担い手の変化をみることができるのです。いうまでもなくこれは中世的なものの始まりであり、古瀬戸へ続いてゆく文様のいわば初現的なものと見なしうるのです。

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