Sanage ware: jar with four handles. 12th century. Height 23.8cm.
Aichi Prefectural Ceramic Museum.
12世紀
高さ23.8cm 口径12.2cm 胴径20.1cm 底径8.1cm
愛知県陶磁資料館
鉄の微粒子を多く含んだ灰白色の粗い素地で、胴のふくらみのつよい四耳壺です。口頸部は中央がくびれて口縁が開き、口縁端の断面は三角形をしています。胴に三条の平行沈線文があります。この四耳三筋壺ともいうべき壺の産地はまだ判っていません。しかし、素地や肩にかかった釉調からみて、猿投窯南部の知多半島に近い山茶碗初期のものとよく似ていますので、あえて猿投窯の範疇に入れたわけです。時代的には12世紀前半代に入ると考えられます。ところで、胴に施された三条の平行沈線文はいわば常滑の三筋壺と同様な配列を示しており、その原型を示すものとも考えられます。このような三条の平行沈線文はさきに図117の経筒外容器にもみたところであり、同じ文様手法に拠ったものです。このような文様手法は中国の磁州窯系の梅瓶類にしばしばみるところであり、その影響によっていち早く猿投窯において採用されたものと考えられるのです。
常滑の三筋壺は通常一本の沈線を上中下三箇所にひいたものであり、その発生の原因について、陰陽五行説あるいは五輪思想のあらわれとして宗教的に解釈されています。その使用目的からみて宗教色のつよいものですが、なかには二本のみのものもあり、五本のものもあるといった不統一さがあり、五輪思想で割り切れるものではありません。むしろ、この三条の平行沈線文をひいた猿投窯山茶碗初期の施文法を写したとみる方が妥当でしょう。