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鶴田 純久の章 お話
冠形耳付水指
冠形耳付水指

Two-handled water jar in the shape of a ceremonial headwear, perhaps Shugakuin ware
Height 18.1cm
Tekisui Art Museum
高さ18.1cm 口径18.9cm 底径12.0cm
滴翠美術館
 あたかも唐人の冠のような形姿の水指ですが、左右に意表をつ大振りの耳をつけたことが作品の面白みを決めています。このような作為は他に見ないもので、仁清を中心とした京焼独特のものといえます。
 仁清の轆轤びきかと思わせるほど薄手で巧妙な作行きで、ほぼ平らに開いた口は縁を垂直に立ち上がらせています。底は平らで、腰に面を取り、身よりも堅く焼き締まった平らな蓋がついています。身、蓋ともに総体に透明性の釉をむらなく薄くかけていますが、底裏は釉がかりが薄いです。
 異形の器ではありますが、桃山期の織部好みに示されたような歪みを強調したものではなく、均斉のとれた瀟洒な趣のうちに独特の作為をきかせているのは、江戸前期の京焼が示した一つの特色といえます。
 後水尾院の修学院離宮の御庭焼ではないかと推測されていますが、「隔蓂記」によると、寛文四年十二月五日に修学院離宮焼の開窯のことが記されていますので、あるいは当時京洛第一の名工であった御室焼の仁清がこれに従事したのかもしれません。

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