これらは古鍋島様式青磁染付五寸皿の典型的な作例で、類例は比較的多い。いずれも生がけ施釉であるためか、高台の歪んだものなどがある。染付の色もやや濃く焼き上がっている。青磁の色も不揃いに焼き上がり、大川内窯の青磁のような粉青色になっていない。
しかし、意匠は大川内窯で完成する純然とした鍋島風の文様がすでにあらわされている。
椋欄の葉の文様は寛文頃からの小袖の雛形にめだって出てくるので、この文様は寛文後期から延宝頃にかけて、新鮮なパターンとして考案されたにちがいない。そして、そのまま大川内藩窯に受けつがれていく。しかしいずれも大川内のものと比べると、どこか大まかである。裏文様は第91図が四方に花を配した牡丹唐草。第92図は青磁の無地である。