形物香合番付東方三段目に位し、やや手軽く記されている。しかし気のきいた形状と文様の晴れやかさから、その気分が汲まれて賞美されている。
形はやや宝珠形に近く、凛々しく締まっており、総体に黄釉がかかり、蓋甲に白檀塗が施され、その暗朱色の中に鯉一尾と桜の文様が浮き出されている。あたかも鯉の背に桜の花びらが散ったようで、春らしいのどかさがあふれんばかりである。また黄一色の冴えた美しさと、白檀塗との色合いがまことに華やかである。
ほかに鯉の部分だけが白檀色のものなどあるが、いずれも色合いが劣るため知られていない。
【伝来】加賀島林家
【寸法】 高さ:4.9 口径:5.2 底径:2 重さ:55