天命釜。小ぢんまりとした釜である。口造りは輪口で、肩には四本の太い筋をめぐらし、胴は丸く、毛切からは後底となっている。鐶付は遠山で肩と胴の間に付けられている。蓋は十二葉単弁の菊花文を大きく線で現わし、竹節のような蛙にもみえる形の摘みを付けた共蓋と、味わいのある唐金打出しの替蓋がある。肩に筋があるところから「筋釜」と名付けられたのであろう。釜肌は非常に荒々しく、岩肌を想わすようにごつごつしており、地金は黒紫色を呈して力強い。形姿・釜肌ともに天命釜の特色を示すもので、天命の代表作の一つといえる。【寸法】 高さ:16.1 口径:13.4 胴径:260【所蔵】 東京国立博物館