宗達筆。
画中に一羽の飛翔する鴨を描出しただけの水墨画であるが、画面に悠揚の気を横溢せしめた画境は、宗達ならではのものである。
宗達の絵画は、桃山時代に育ち、慶長の後半から元和寛永期に開花しているから、まだ桃山の豪快な英雄趣味を失わず、しかもその気分を大和絵の日本的な線と色彩に加え、宗達独自の造形感覚によって縦横に表現したのである。
宗達画の源流は大和絵と漢画にあるが、彼はその古典性をよみがえらせ自由さとたくましさを吹き込んでみせたのであった。
水墨画にあっては、漢画の骨組みを日本的情感によって置き換えることに成功したのが本図である。
【寸法】画面一縦103.0 横48.6
【所蔵】逸翁美術館