単庵智伝筆。
横物の画面効果を最大限に活用し、大観性とでも称すべき視ひようびよう点によって縹たる山水の景観を展開している。
構図・描法ともに静的で真摯な画風である。
筆様は牧谿に意を得ており、智伝の師相阿弥の指導によるもので、習作的な性格がみられる。
智伝については『等伯画説』 の記述が唯一と思われ、尼崎の塗物下絵師の出身で、見込まれて相阿弥の弟子となったとき、絵の手本を入れるために親に長を所望している。
喧嘩で若死したと伝えられるが、血気盛んな職人気質のあった人物らしい。
鋭い筆勢と動的な画面構成をもつ作例が比較的多いが、本図は相阿弥の草体すなわち軟かい画風を踏襲したものである。
【付属物】極書―狩野永真筆