牧谿筆。国宝。瀟湘八景図の内。牧谿の山水は、実景に意を得たものだが、胸中あふれんばかりの詩情を画筆に託して吐露表現したもので、それは心中に展開する理想郷であった。画中にあって雨や風の音はかえって静寂を増す。自然現象の中に存在する音を絵にするとき、自然の姿が変貌し芸術としての形をもつの る。鐘声のあるなしで風景が変わることはないが、鐘声によって詩情が動くとすれば、その情麺は画中に再現されるはずである。牧谿は鐘声を絵にし、これを鑑賞者に伝えることに成功したのである。絵から鐘声を感じるのは、東洋的美意識による。【寸法】全体-縦137.5 横116.9 画面 縦32.8 横104.2