酒井抱一筆。
桃の節句にふさわしい佳作。
紙雛の単純な造形、可憐な面貌、藤花をあしらい松の緑と朱の地色をきかせた色感は、袴と帯の渋さと調和し、華やかさの中に落ち着いた気品を醸し出すことに成功している。
酒井抱一(1761~1828)は、姫路藩主酒井忠以(宗雅)の弟で、名は忠因、通称栄八、江戸に生まれた。
文芸愛好の血を受け、絵画をはじめ和歌・連歌・書・能など諸芸を嗜んだ。
37歳で出家、根岸に移り雨華庵・雨村と号す。
絵は狩野・土佐・円山派、浮世絵、中国写生画と幅広く学んだが、宗達・光琳派の造形を指標とし江戸後期の琳派に光彩を与えた。
【寸法】 画面 縦27.8 横19.3
【所蔵】逸翁美術館