赤楽茶碗。
光悦作。
重文。
光悦七種の内。
もと加賀にあり、仙叟の所持により命銘。
角造りの代表作で、ことに光悦得意の箆使いが随所によく発揮され、造形における光悦の特色が端的に現われています。
全体がわずかに内側に抱え込むように傾いた造りで、胴は一方において直線にみえ、一方は柔らかい弧の線を描きます。
口縁は口箆の切回しがあって山道となっており、口縁より大小多くの竪箆が胴に立って見事な見所をなし、腰下から高台に向かって「不二山」(109頁上)・「七里」(六六頁上)と同様、鋭く直角に削られています。
高台は輪高台で、これも「不二山」などと規を一にします。
白土に黄土を刷いており、その刷き方も無造作で素地ののぞいたところもあり、偶成の景となっています。
釉がけは内外ともに光沢の強い赤色釉で覆い、土見ずで、一部は褐色を呈し、特色の白いむらむらがところどころに浮かんで、趣を加えています。
口縁下にIカ所青い飛び釉があります。
内部は赤色釉の中に黒いむらむらが二ヵ所あります。
光悦茶碗中、最も景色に富んだ一碗です。
寛政の頃、松平不昧は、雪舟三幅対・信楽水指「三夕」(355頁上)とともに価七百両でこの茶碗を購入した。
『本朝陶器孜誼』『茶器名物図彙』などに記載。
《付属物》内箱-桐白木、蓋裏書付竺叟宗室筆 外箱-桐白木、書付松平不昧筆 被覆-いちど錦
《伝来》加賀大納言-仙叟宗室-裏千家-冬木喜平次-松平不昧
《寸法》高さ9.3~9.8 口径11.5~12.6 高台径5.7 同高さ0.5 重さ531