
付属物
内箱 書付 久須見疎安筆
伝来
大阪 平瀬家
寸法
高サ5.0cm
口径5.0cm
胴径5.9cm
底径3.2cm
重サ76g
元来、交趾香合には、今日の好みから考えると、存外奇抜な意匠がある。この香合も、蓋の上に黄釉で鹿の伏した姿をあらわし、身は青釉である。鹿は、ふるく中国では瑞獣として珍重がった。そのためこうした形がうまれたものであろう。黄鹿とよぶ。
筆者は、同形の香合は数個より拝見の機会にめぐまれていないが、この香合のように鹿は黄釉であって、総体に青釉のものは二個より見ていない。他の紫鹿などをあわせても、せいぜい十個ほどより伝来していないのではなかろうか。
これは、大阪の平瀬家に伝来して、大阪の数奇者の羨望の的となっている。平瀬露香の箱書で、久須見疎安(三百年前の茶人)が筆蹟と極書をしている。
この香合の形についてはことに筆者は、だれがなんの用に造らせたものかと考えさせられる。おそらく産地では、他の用途の器であったことかと数百年前を顧みての思いである。




