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山内肩衝

山内肩衝(やまうちかたつき)

古瀬戸 大名物 伯爵 酒井忠道 氏 所蔵

名称
土佐藩主の山内家が秘蔵していたことから、この名があります。

寸法
高さ:約7.1cm(2寸3分半)
胴径:約6.8cm(2寸2分半)
口径:約3.6cm(1寸2分)
底径:約3.6cm(1寸2分)
甑(こしき)の高さ:約0.6cm(2分)
肩幅:約0.63cm(2分1厘)
重量:約120.8g(32匁2分)

付属品
・蓋:3枚(巣)
・御物袋:白縮緬(しろちりめん)の丸袋、緒つがり(紐)は白
・袋:3点
 1. 鶏頭切(けいとうぎれ)、紐は焦茶、裏地は縹(はなだ)色
 2. 清水切(しみずぎれ)鳥桐模様、紐は遠州茶、裏地はかき色
 3. 唐物浅黄純子(あさぎどんす)、紐は紫、裏地は萌黄海気(もえぎかいき)
・袋箱:黒塗几帳面(きちょうめん)、鐶(かん)は赤銅金メッキ、紫の紐
 内張りは白の唐天鵞絨(からびろうど)
 「山内肩衝」とあり

(備考)箒庵文庫甲第17号の茶書に、この袋箱は東山時代のものと見られると記されています。
・古袋:1点
 白地古金襴(しろじこきんらん)
・袋箱:黒塗、懸子(かけご=中の入れ子)式の箱に蓋2枚を入れる
 箱の蓋の表の書き付けは以下の通り
 「神尾若狭様のお好み
 中古瀬戸茶入の蓋袋
 山内孫四郎より差し上げる」

 箱の蓋の裏の書き付けは以下の通り
 「白地金襴袋。この表は古い袋である。この裏に紐が付く。仕替えは萌黄色、蓋は1枚。内張りは金紙の小柴(模様)。
 右は神尾若狭守様の御注文(御敷寄)によるもので、袋は裏地と付け替え、蓋は新しく出来上がったものである。
 延宝4年(1676年)7月4日」
・挽家(ひきや):黒塗
 袋:浅黄地白葵崩模様純子、紐は紫、裏地は海気
・内箱:桐の白木
 「瀬戸茶入 山内」とあり
・外箱:黒塗、金粉の字形
 「瀬戸 肩衝 山内」とあり
・添え書き付け:2通
覚え(受領書)
一、金250両也。ただし通用札(紙幣)。
ほかに御褒美として金20両。
瀬戸山内茶入。
袋3点、2つの箱に入れて添える。

右の通り、お売りいただいた代金を確かに受け取りました。
本屋平藏
午(明治3年)12月27日
成田其一 様
上田鉄司 様
(備考)成田其一、上田鉄司はともに若狭小浜藩(若州)酒井家の執事である。

土佐高知山内家に代々伝わる古瀬戸茶入を、同家の隠居である容堂豊信(山内容堂)公がこの度お売りになったため、買い入れさせていただいたものである。
明治3年庚午(1870年)12月29日

雑記
「山内肩衝 松平土佐守」:(古名物記より)
「山の内 瀬戸肩衝 松平土佐殿」:(玩貨名物記より)
「山うち 瀬戸肩衝 大名物 松平土佐守」:(古今名物類聚より)

山内茶入:藤四郎の秀作。明治4年未年(1871年)3月22日、東京牛込区矢来町の酒井伯爵邸にて拝見。肩の部分に目立たない面(面取り)がある。柿色の地に黒い雲のような帯が太く入っており見事である。置土(おきつち)が見える。袋箱は黒塗几帳面、鐶(かん)は赤銅に金メッキか、紫の紐。東山時代のものと見られる。内張りは白の唐天鵞絨。袋3点が入る箱である。挽家は黒塗、御物袋は白ちりめん。蓋は1枚で厚みがあり、巣(くぼみ)がある。
(茶入の図あり)
(箒庵文庫甲第17号)

伝来
山内肩衝がいつ山内家に入ったのかは明らかではありませんが、『古名物記』や『玩貨名物記』に「松平土佐守」と記載されていることから、万治年間(1658~1661年)以前からすでに同家にあったことが分かります。
さて、明治3年末にこの茶入が酒井若州侯(小浜藩主酒井家)の手に入った事情を知っているという人の話によると、当時は煎茶器の流行が盛んで、抹茶器のようなものはほとんど顧みられなくなっていました。山内容堂公もまた煎茶を好まれていたため、文人や骨董商の出入りが多くありました。ある日、彼らが容堂公の前で雑談していた際、しきりに抹茶器をけなしていました。容堂公はこれを聞いて、「抹茶器といえども、我が家に伝わる山内肩衝のようなものはその限りではない。試に見るが良い」と言って、得意そうにその茶入を示されました。しかし、その骨董商らは「この名物の御茶入であっても、今の世の中ではまさか100円を超えることはないでしょう」と言いました。かねてより抹茶器を好み、また目利きとしての評判もあった「本屋平蔵」という者がその傍らでこれを聞いており、憤慨のあまり「私なら300円で頂戴しましょう」と言い放ちました。そしてすぐに走って酒井若州侯の邸宅へ赴き、事の顛末を話したところ、維新前から抹茶器の買い取りに心血を注いでいた主侯(温良院)は、その言い値での買い取りを承諾されました。容堂公としては、もともとこれを売却するつもりはありませんでしたが、事の行きがかり上、引くに引けなくなり、ついにこれを手放すことになったということです。

實見記
大正8年(1919年)4月25日、東京市牛込区矢来町の酒井忠道伯爵邸において実際に拝見した。
口作(くちづくり)はやや厚く、粘り返し(口縁の内側の折り返し)は浅い。肩はやや丸みを持っており、全体的に文琳(ぶんりん)に似た丸い形状である。紫色に薄茶色、あるいは金属的な光沢(金気)を帯びており、口縁から肩にかけて黒釉(くろゆう)が濃く掛かっている。胴には沈み筋(横線)が1本あり、その上に柿色で金気が抜けた部分が2箇所ある。釉薬の垂れ(置形)は、黒釉が肩から胴の筋以下約0.9cm(3分)ほどのところで止まっている。裾回りの釉薬の掛かり具合は高さが不揃いで、額が抜けたようになっており、釉薬の中に素地(土)が見える部分がある。腰から下は轆轤(ろくろ)の目が深く、また踊り箆(へら)の跡がある。糸切り(底の跡)はやや乱れていて趣があり、その中央には虫食いのような横に長い小さな穴がある。底回りには石ハゼ(粘土の中の石が弾けた跡)が1箇所ある。また、裾の土の中に柿金気色の飛び釉(釉薬の飛び散り)が1点ある。内部は肩の辺りまで釉薬が掛かっており、それより下は全体に土の素地を見せており、底には少し釉カセ(釉薬の風化)がある。見どころ(景色)が多く、わび寂びの味わいが十分にある茶入である。

【原文】

山内肩衝

古瀬戸 大名物 伯爵 酒井忠道氏蔵

名称
土佐侯山内家の秘蔵なりしを以て此名あり。

寸法
高 弐寸参分半
胴径 弐寸弐分半
口径 壱寸弐分
底径 壱寸弐分
甑高 弐分
肩幅 弐分壱厘
重量 参拾弐匁弐分

附属物
一 蓋 三枚 窠
一 御物袋 白縮緬丸袋 緒つがり白
一 袋 三ツ
鶏頭切 緒つがり焦茶 / 裏 縹(かき)
清水切鳥桐模様 緒つがり遠州茶 / 裏 かき(い)
唐物浅黄純子 緒つがり紫 / 裏 萌黄海気
一 袋箱 黒塗几帳面 銚赤銅金めつき 紫緒
内張白唐天鵞絨
山内肩衝

(備考)箒庵文庫甲第十七號の茶書に此袋箱東山時代と見ゆるこ記せり。
一 古袋 一ッ
白地古金襴
一 袋箱 黒塗 懸子に箱入蓋二枚を入る
箱蓋表の書付如次
神尾若狭様ノ好
中古瀬戸茶入ノ蓋袋
山内孫四郎上

箱蓋裏の書付如次
白地金襴袋 此表は古袋なり 此裏に緒付ク 仕替モエギす蓋一枚 内張金紙の小しば
右は神尾若狭守様御敷寄にて袋は裏と付ヶ替り蓋は新敷出来
延寶四年七月四日
一 挽家 黒塗
袋 浅黄地白葵崩模様純子 緒つがり紫 / 裏 海気
一 内箱 桐 白木
瀬戸茶入 山内
一 外箱 黒塗 金粉字形
瀬戸 肩衝
山内
一添書付 二通

一 金二百五十両也 但通用札
外に為御褒美金二十両
瀬戸山内茶入
袋三ツ 二箱入添

右之通御賣上代金慥請取申上候
本屋平藏
午十二月二十七日
成田其一 樣
上田鐵司 樣
(備考)成田其一、上田鐵司は皆若州酒井家の執事なり。

土佐高知山内家重代の古瀬戸茶入彼家隠居容堂豊信此度賣拂候に付き取入置候もの也
明治三庚午年十二月二十九日

雑記
山内肩衝 松平土佐守。
山の内 瀬戸肩衝 松平土佐殿。
山うち 瀬戸肩衝 大名物 松平土佐守。
(古名物記)
(玩貨名物記)
(古今名物類聚)

山内茶入 藤四郎上出来 明治四未年三月二十二日矢來東京牛込區矢來町酒井伯邸にて拝見。肩に目立たぬ面あり、柿地黒曇帶太く見事、置土か袋箱黑塗几帳面銃赤かかね金メッキか、紫緖、東山時代と見ゆる、内張白唐天鵞絨、袋三ッ入箱。挽家黒塗、御物袋白ちりめん、蓋一枚厚し窠あり。
(茶入圖あり)
(箒庵文庫甲第十七號)

傳來
山内肩衝は何時山内家に入りたるや分明ならざれども、古名物記又は玩貨名物記に松平土佐守とあれば萬治以前より已に同家にありしを知るべし。扨て明治三年末此茶入が酒井若州侯の手に入りたる事情を知れりと云ふ人の話に、当時煎茶器の流行盛にして、抹茶器の如きは殆んど之を顧みるものなく、山内容堂公も亦煎茶を好まれしかば、文人骨董商の出入多く、一日彼等御前に於て雑談の際、頻りに抹茶器を擯斥せしに、侯は之を聞きて「抹茶器とても我家傳來の山内肩衝の如きは此限りに非ず、試に一覽せられよ」とて、得意氣に同茶入を示されけり、然るに彼の骨董商等は、此名物御茶入にても當今にてはヨモ百圓には過ぎざるべしと言ひければ、兼て抹茶器を好み且つ目利の評判ありし本屋平藏なる者、傍に在りて之を聞き、奮慨の餘り「私ならば三百圓にて頂戴仕らん」と言ひ放ち、直に走せて酒井若州侯邸に赴き、事の仔細を語りしに、維新前より抹茶器の買収に肝膽を砕きたる主侯温良院は言ひ値を以て其買取を承諾せられしにぞ、容堂公は敢て之を賣却するの意なかりしも、事の行掛りより止むを得ず遂に之を手離すに至れりと云ふ。

實見記
大正八年四月二十五日東京市牛込區矢來町酒井忠道伯邸に於て實見す。
口作稍厚く粘り返し淺く、肩稍丸味を持ち、總體文琳に類したる丸形にて、紫色に薄茶色又は金氣を帯び口緣より肩にかけて黑釉濃く、胴に沈筋一線ある其上に、柿金氣ぬけ二ヶ所あり、置形は黑釉肩より胴筋以下三分許の處に至りて止まる、裾廻り釉掛り高低不同にて、抜け額の如く、釉の中に土を見る處あり、腰以下轆轤目深く、又踊箆あり、糸切稍亂れて面白く、其中央に虫喰の如き横長き小穴あり、底廻りに石ハゼ一ヶ所あり、又裾土の中に柿金氣色の飛釉一點あり、内部肩の邊まで釉掛り、夫れより以下總體土を見せ、底に少しく釉カセあり、景色多く寂味十分なる茶入なり。

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