高さ7.1cm 口径11.2cm 高台径5.6cm
内箱蓋裏に「長次郎焼 黒茶碗 利休所持 遊行 宗旦(花押)」とあり、また宗旦の消息が添っていて、そこに「翠岩様先二被仰候茶碗之事箱二則由緒書付進候 遊行ト仕候 宜敷御申上奉頼候 恐惶かしく 一六日(花押)不審 立首座様 旦」とあり、宗旦が「遊行」と名付けたことを書しています。外箱は覚々斎原叟の筆です。
ロ部の抱込みは深く、しかも口縁に高低をつけ、胴を引き締めた作振りはどこか「雁取」に似ており、また三斎好みとして細川家に伝来した「乙御前」とも似ています。黒柚はよく溶けていますが、褐色をおび、腰に一文字に火間が生じ、赤土があらわれているのは珍しいです。見込の柚膚は艶がなくしっとりとしています。高台畳付に目跡が五つ、腰に窯疵一筋が縦に入っています。『楽焼名物茶碗集』に記載されていますが、紙上に紹介されるのは初めてです。