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鶴田 純久の章 お話
黒茶碗 銘天狗 049

高さ8.7cm 口径11.5cm 高台径5.7cm
表千家
 これまで示した茶碗とはかなり作行きが異なります。全体に厚作りで、胴は楕円に歪み、口部は抱え込みがなくむしろ外に反りぎみのところがあります。胴なかばには胴紐のような段がめぐり、見込には大振りな茶溜りが浅くつけられています。高台にも志野や織部のような歪みをつけ、高台を中央にして三角形の土見せにしているのも美濃の茶碗と共通する作行きです。釉膚は褐色をおびていますが、よく溶けています。高台内には、天下一田中宗慶作と彫銘のある「三彩獅子香炉」(図91)と同じ楽印が捺されていますが、この印が宗慶独自の常用印であったか、長次郎焼共通の印であったか判然としないところから、この茶碗を宗慶作と断定することはできません。しかしこの茶碗の楽印は、常慶作と伝えられる作品に捺されている印よりやや大振りで。
字形も異なり、あるいはこの印が豊公拝領の金印であったとも推測されます。内箱蓋表には「黒茶碗 天狗 残月口 不審」と宗旦が書付しています。

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