ゼーゲル錐 ゼーゲルすい

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鶴田 純久の章 お話

窯業用高温計の一種。
ゼーゲル三角錐ともいいます。
1886年ドイツのベルリン王立磁器製造所のゼーゲル(H.A.Seger 1839-1893)考案したもので、陶磁器原料と同一の原料でっくり、その化学的成分と熔融度との関係から一定のスケールをつくったものです。
すなわち化学的成分によって調合し、これを標準の二等辺三角形を底辺とする三角錐につくり、その底辺に当たる面を約80度に立てて所要の位置に置き覗き穴から見ますと、加熱の進行に従いその熔融度に達すると熔融して頂部から曲がり、頂部はついに立てた面に接してしまいます。
その熔融度はあらかじめ試験し測定してありますので、その状態で窯内の温度がわかります。
陶磁器はただ熱のみを高くしてもよく焼けよく熔けるものではないようです。
比較的低熱でも長時間かかるとかえって高熱の短時間よりもよく焼けるものであります。
普通小窯で焼成する時と大窯で焼成する時とは同一火度でもその焼け方・熔け方が大いに異なり、少々火度が低くても大窯の方がよく焼けるものであります。
これは一に時間の関係によります。
したがって陶磁器の焼成に当たり必要なのはただ温度だけでは決してなく、この点においてゼーゲル錐は焼成物と同一物質で構成されますので、その熔融状態は窯内の素地と同様であるため、その示す温度はたとえ正確ではないとしても、焼成された状態にはよく適合します。
陶磁器の性質はこのように加熱の状態のいかんによって大いに熔融状態にも関係するため、ゼーゲル錐を使用するに当たってはその正確な温度は標準制定の加熱状態によらなければならないようです。
しかし実際の加熱状態はこれと一致しないことがありますので、その点からすれば示す温度の正確さは他の高温計がはるかにすぐれているとしても、品物の焼成状態をみるにはゼーゲル錐のほうが真の状態に近いです。
これがすなわちゼーゲル錐の重要視されるゆえんであります。
温度測定の諸計器はいずれも一局部の温度を指示するのみですので、窯内各部の状態を詳細に知り尽くすためには多くの計器を用いる必要があるようで、またその取り扱い方が悪ければついには誤測するなどのこともあるようで、そのために窯中の製品に大損害をきたすことがよくあります。
それゆえ古来熟練した眼による大色の観測の判定はまずほとんど誤りがないといってよく、物体の加熱によって生じる光度は非常に正確であるので窯焚きは何よりもまずこの火色に注意し、計器はむしろ参考にするのが現況であります。
現行のゼーゲル錐はゼーゲル以後数次の改訂を経たものであります。
わが国に伝来したのは1892年(明治二五)ドイツ人ワグネルにより、以来久しく輸入品に頼っていましたが、第一次世界大戦に際し東京工業試験所および京都市立工業研究所窯業部から製出され、一本五銭見当でありました。
SK8とはゼーゲル錐八番の意であります。
他もこれに準じます。
現在では日本ゼーゲルコーン協会が製造し、東京工業試験所の検定を受けて市販されています。

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