備前水指。大名物。武野紹鴎所持。珠光・紹鴎・利休による佗び茶成立史上からみても記念的な遺物であります。
茶祖といわれる珠光は、従来の唐物尊重主義から転じて、和物の備前もの・信楽ものをはじめて茶の湯の場に採用しました。
その道統を継いたのが紹鴎・利休であります。
この水指をみても、その当時の志向が察せられます。
形はいわゆるよな何の街いもない備前の民具であります。
肌は赤黒く非常に焼きが堅く、一見して古銅器を想わせ、口縁わずかに自然釉がかかり、無為の中に限りない深趣をたたえています。
『玩貨名物記』所載。尾張徳川家の重宝として伝えられました。
《寸法》高さ18.2 口径18.2《所蔵》徳川黎明会
