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鶴田 純久の章 お話

高取焼茶入。
中興名物。
銘の由来は『伊勢物語』の「染川を渡らむ人のいかでかは色になるてふことのなからむ」の歌意に因んで名付けられました。
の茶人は筑前福岡藩主黒田侯のために焼かれたものらしく、茶入ができる前から、小堀遠州に命銘を請うたといわれ、高取家の記録によると、千個ほど焼いた茶入の中でこの茶入を残し、他は残らず割り捨てたと伝えています。
黒田家において「秋の夜」(143~頁)とともに一つの箱に納められました。
薄造りで遠州好みの独特の優雅な耳付肩衝形をしており、胴体には粗い轆目があります。
肩先より胴中にかけて光沢のある飴釉がかかり、その一面では白釉が末ひろがりになだれます。
釉色がさまざまに変化し、その織り成す景色は見事なものとなって、高取釉の特色を余すところなく現わしています。
裾から下は朱泥色の土をみせ、轆轤目が二、三段不規則にあります。
やや円座形をした底は縁を削り、その内側に細かい糸切があります。
『古今名物類聚』『麟鳳亀龍』などの名物記に記され、酒井宗雅侯の『愈好日記』にも詳述されていますが、この中に記載の遠州書付の家は現在失われています。
【付属物】蓋―四 仕覆―五、白地小牡丹金襴・望月間道・清水裂・三雲屋緞子茶地雲宝入安楽庵(図版右より) 内箱―桐白木、銀粉字形 外箱春慶塗、縁沃懸藤鳥の蒔絵、金粉字形 添巻物小堀遠州筆添巻物箱-桐白木書付
【伝来】 黒田家―藤田伝三郎 井上世外
【寸法】 高さ:1 口径:3.9 胴径:6.3 底径:3.5 重さ:145

染川 そめかわ

中興名物。国焼茶入、高取焼。銘は黒田侯の求めに応じて小堀遠州が選んだもので、『伊勢物語』の「染川を渡らむ人のいかでかはいろになりますてふととのなからむ」の歌に因んだもの。染川は九州の名勝。薄づくりで精巧を極め、飴・白・浅黄の釉色変化の妙はすばらしい。筑前黒田侯に伝来し、同じ手の「秋の夜」と共に一箱に納められて黒田家の物でありましましたが、後年藤田伝三郎を経て井上世外に入った。(『古今名物類聚』『麟鳳亀龍』『大正名器鑑』)

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