伊賀・信楽・備前・常滑・瀬戸などの古窯から、数百年の昔から種壺・種浸壺と称される壺類が出ます。
いずれも無釉のまま焼き締められたものです。
吹出釉・焦げ・石ハゼなど巧まない偶然の景色があるようで、形状もまた古朴で少しの匠気もなく渋味がちなために、茶人の間で花生には無類のものとして珍愛されています。
種壺は昔農家で種を貯えるのに用いたもので、三つあるいは四つの耳があります。
おそらく種を入れて蓋をし耳に紐を通して蓋を押さえたものであるでしょう。
耳のないものもあります。
単に飾りだけの耳があるのは後世の模作で、茶器としてつくったものだといわれます。
花生のほかに口の大きいものは水指にも用いられます。
種浸壺は水を入れて種を浸しておく壺で、耳がないようです。
花生のほか水指・茶壺に用いられます。
伊賀・信楽の種壺・種浸壺は特に著名で最も愛され、茶人が掛花入として愛する鱒(踪)もまたこの種の壺であるといいます。
ただし近年これらは農具品ではなく銭壺であったという新しい研究もみえています。
(『日本陶甕史』『伊賀及信楽』『工芸志料』『陶磁』二ノ一)