注口土器 ちゅうこうどき

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鶴田 純久の章 お話

土瓶の口のように液体を注ぐための筒状部分を注口と呼び、それを具える土器を注口土器と呼びます。
わが国の縄文式土器で現在知られている最古の実例は新潟県室谷洞窟から出土した深鉢(草創期)で、口縁下に水平方向に極めて短く突出した注口を具えています。
南関東の前期(関山式)、東北地方の中期(大木式)にも注口土器があります。
しかしこれらはいずれも深鉢形を呈しており、かつまれな存在であります。
注口土器が土瓶の形態をとり系統的な発達をとげるのは後・晩期においてであるようで、ことに関東北で目立つ存在となりました。
西日本では遅れて後期中頃に登場し、しかも晩期に入ると姿を消しました。
土瓶形注口土器には提げ手までをつくり出したもの、相対する二方に提げ手を付けるように耳を具えたものもあります。
東北地方の注口土器には注口を男性器に見立てて、その基部に二個の瘤状突器を横並べにしたものがあります。
弥生式土器にもまれに注口土器があります。
東北地方の中期(天王山式)には壺の胴部に短い注口を具えたもの、瀬戸内地方の中期末に台付鉢の口縁下に注口を取り付けたもの、山口県西端の中期(須玖式)の台付無頚壺の胴部に短い注口をもつものなどであります。
烏取県の土師器壺にも注口土器があります。
伊勢湾沿岸地方以東の須恵器の聘にも孔の周辺を短く突出させた一種の注口土器があります。
注口土器の形態を分類し、地域的分布を論じた研究(中谷治宇二郎『注口土器の分類と其の地理的分布』東京大学人類学教室第四冊)がありますが、土器型式の研究が進んだ現在ではその分類はほとんど通用しないようです。

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