釉面に現れたひびのこと。
釉亀裂・釉謔・釉憂など皆同じ。
後述するように種々の字をこれに当てますが、現在は貫入・貫乳の字が最も用いられています。
中国では開片と称し昔から鑑賞上重要な位置を占め、その形状・細大・美醜を論じて、魚子文といい、牛毛文といい、また柳葉文・蟹爪文・百坂砕・梅花片文・氷裂文・断線文などとおよそいろいろにいわれます。
わが国のひび釉としては薩摩焼・粟田焼・萩焼などが有名。
釉ひびを一種の装飾となし、これをはっきりさせるために黒色。
赤褐色などを付けることがあります。
すなわち窯出し直後これを墨汁・紅殻汁中に浸し、またはこれを塗布するのであります。
窯出し後長時間を経過すると間隙は閉塞され、これらをその間に入れることができないようです。
貫入の原因のすべては究め難いですが、要するに焼成と冷却との間、素地と釉薬とが膨脹収縮の度を異にするからであるでしょう。
もちろんそのほかにも貫入発生の原因があることはいうまでもなχJOrV.「字義」『嬉遊笑覧』『梅園日記』『大言海』などは、中国宋官窯の器には裂文があり、それ故官窯を「くわんによう」と連声に呼んだものが転じた語であるといいます。
貫入の当て字を若干以下に例示しますと、績乳・鎖乳(『遊学往来』)、官用(『尺素往来』)、珀瑶(『君台観左右帳記』)、錐宿(『運歩色葉集』)、耶珀(『茶具備討集』)、款入(『塩尻』)、百坂砕・裂文・氷紋・氷裂・砕紋(『名物六帖』)、雲屯(『楽焼き秘嚢』)、官窯(『梅園日記』)、貫乳・款人・火人・詩入(『大言海』)。
「塩尻」は款人の意であります。
内へ切り込んでいるのでそういいます。