色絵吉野山図茶壺

色絵吉野山図茶壺
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鶴田 純久の章 お話
色絵吉野山図茶壺
色絵吉野山図茶壺

Ninsei: tea jar with Mt. Yoshino design, enamelled wareHeight 35.7cm Fukuoka Art Museum
高さ35.7cm 口径12.2cm 底径12.9cm
福岡市美術館
 「色絵藤花図茶壺」 と同様の形ですが、ひとまわり大振りでいかにものびやかに成形されています。しかし、その轆轤びきはいささか荒々しいです。口部から胴裾にかけてかかった白濁色の釉膚も、釉がかりにむらがあって色絵藤花図茶壺のような滑らかさがありません。さらに胴にめぐらされた吉野山の図も大まかにのびのびとあらわされていますが、その上絵技術はかなり粗放であるように思われます。
 このように、同じ茶壺でも「色絵藤花図茶壺」 や 「色絵梅図茶壺」と比べますと、その作振りにはかなりの違いがうかがわれます。この壺は轆轤も上絵付ものびやかではあるが粗放さが目立ち、それに対して図1は整美です。胴に描かれた吉野山図は、仁清の茶壺のなかでは絵画的にはもっとも優れているように思われますが、上絵具の使用法には未熟さがうかがわれ、手慣れた上絵付師の仕事とは思えません。
 そうしたことから、色絵藤花図茶壺や色絵月梅図茶壺を完成期の作とみるならば、この茶壺や「色絵山寺図茶壺」 「色絵芥子図茶壺」 は、あるいは仁清の色絵茶壺としては初期の作例ではなかったかと思われます。平らな底には、例によって左側中央に 「仁清」 の大印が捺されています。
 かつて丸亀京極家に伝わったらしく、後に城下の入江家に移り、さらに松永安左衛門翁の蔵となり、松永記念館に移管されましたが、現在は福岡市美術館の松永コレクション室に蔵されています。

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