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鶴田 純久の章 お話
備前 沈線文壺
備前 沈線文壺

Bizen ware: jar with incised lines. 13th century. Height 31.5cm. Bizen Old Ceramic Museum.
13世紀
高さ31.5cm 口径18.3~19.0cm 胴径28.7cm 底径19.0cm
備前古陶美術館
 このような広口壺は、古備前のなかで最も一般的な壺形態の一つです。それは平安後期の須恵器広口壺の系譜をひくものであり、鎌倉時代中ごろに到って定型化したものと考えられます。口頸部が短くなり、口縁端が外方にまるく折りまげられて玉縁にちかくなっていることや口径と底径が等しいことなどやや新しい様相をみせていますが、口頸部が太く、外反する姿に古さを認めることも可能です。
13世紀も未葉の作とすべきでしょうか。成形は紐づくりで器面は板状の整形具で削られて整然としています。焼成はきわめて堅緻で、まだ須恵器のそれと同様に還元焼成で灰色を呈します。備前特有の赤い火色は次代に到って出現します。肩に施された二条の沈線は無雑作に引かれています。このような沈線文は13世紀に入って出現したものであり、この壺は初期の沈線文壺の一つです。農民用の雑器として貯蔵用に用いられたものでしょう。

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