明代。
名物裂。
小堀遠江守政一(1579~1647)の好んだいわゆる遠州緞子の数は実に多い。
その中でも小堀家の家紋である花入り七宝紋(輪違紋)の織り込まれた石畳緞子は特に著名であるが、輪違紋のみで全面を織り上げた裂もまた好み裂の一つである。
萌黄地に全面を金茶色で織り出し、ちょうど金地金襴のような趣を示す特殊な緞子で、気品のある、それでいて明快で、一抹の渋さを秘めた裂といえる。
遠州はこの裂で仕覆を好み、大名物「利休物相茶入」・中興名物「春慶口瓢箪茶入」などに添えている。
輪違紋では米市金襴が知られ、この雰囲気には共通するものがあるから、ともに遠州好みとみてよいであろう。
【所蔵】五島美術館