明代。
名物裂。
蜀江錦は蜀錦とも蜀紅錦とも書くが、古くは中国四川地方の蜀(22~63)の首都成都付近で織られた錦で、法隆寺伝来の隋代のようらく経錦が遺存している。
名物裂で蜀江錦と称するものは明代の裂で、紅色の鮮やかな地色が退色して黄茶色に変化しているが、緑・紺・白など多彩な配色による豪華な錦裂が多い。
この裂は中央に天蓋を配し、その下に種々の装飾を加えた瓔珞紋が織り出され、最下端は蜀江紋と称する大形の繋ぎ紋が全体を締めくくっている。
たぶん明代嘉靖期の渡来品であろう。
一時帛紗として仕立てられていたらしいが、ひろげて保存されている。
「寿」の文字を中心にした中国的意匠の典型的作例といえる。