明代。
名物裂。
角倉了以(1554~1614)の愛用裂であったと伝えるところからこの名称があるが、花兎金襴の一種である。
紺地に大柄の花兎の作土紋を現わし、一列ごとに左・右向きの紋様となって、単調な紋様の繰り返しを防いでいる。
作土紋は縦3.6センチ、横三センチほどで、花紋も土坡も明瞭で、土坡から草花が根付きの姿で生え昇っている。
柄が大きいために表具裂として向いている。
また濃紺の地色であるため表具の趣を一段と引き締め、可憐な花兎紋が優雅な雰囲気をつくってくれる。
大名物「円乗坊肩衝茶入」などの仕覆に用いられているが、大形の茶入にふさわしい名物裂で、明代末期の織製と思われる。
【所蔵】東京国立博物館