海鼠釉すなわち中国均窯などの青色現象は、銅呈色とも鉄呈色とも両様にみられていますが、その紅斑の加わらぬ以前の原始的灰釉に発生した海鼠青は、主として自然の鉄分に基づき、しかも物理的な間接作用から現れる色で、それはコロイド化学の金紅色の実例でも推知されますが、とりわけ天空の青色に関する波長説などはその解説の適例に当たるものであるでしょう。
もし兎の斑釉を透視すれば、青色現象の原因が悟られましょう。
この現象こそは一般陶釉の妙趣の原因のように思われます。
それゆえ古製の均窯を無視するようなことは、かえって事実に遠くなるであるでしょう。
(塩田力蔵)