一般に松薪は焔が長く、灰量が少なく、かつ硫化金属を含まないため陶磁器焼成に適し、古来多く使用されてきました。
とりわけ樹脂の多い軟木、例えば赤松材などを最良とします。
軟木は発熱量が高いためであります。
堅木は火の保ちがよいが焔が短いです。
焔の性質を重要視する絵付窯などには赤松の樹齢があまり古くなく素直に育って柾の通り節のないものを可とします。
素地焼成にはこれと比べて選材がいくぶん簡単であります。
あるいは釉色により松薪でなくては良好の色を得ないといって特に松薪を賞用するものがあります。
例えば呉須染め付け・瑠璃などは石炭では期待の色を得ないといいます。
しかし一般には乱伐の結果、良材がだんだん欠乏してきて高価となり、大正から昭和十年代には石炭その他の燃料を採用するようになりました。