色鍋島 いろなべしま

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鶴田 純久の章 お話

色絵鍋島ともいいます。
肥前国佐賀藩鍋島侯の御用窯である西松浦郡大川内窯(伊万里市大川内町)のいわゆる鍋島焼の色絵物で、鍋島焼の主眼。
古九谷の古拙放胆、柿右衛門の絢爛濠洒と並んで江戸時代の磁器中の精華といわれます。
それが特に珍重されたのは、明治維新まで鍋島侯の御用品として民間に出されず私用を禁じられていたことにもよりますが、特に洗練された技術によって極めて精巧につくられていることによります。
【色鍋島の鑑賞】一定の形式を具えた皿が最も普通で、素地は形状が極めて正確でいささかの狂いもなく、斑点・疵はほとんどないようです。
絵付は非常に精巧で労力を惜しまずに描かれ、御用窯の製品だからこそ可能な結構さを示しています。
図案もまた優秀で色の調和がよく具わり、落ち着いた重みのある上品な気分を遺憾なく現して、巧妙熟練の極を尽くした描線の美しさと共に他が企及し得ない妙味を誇っています。
皿の形と曲面とには独自の点があり、図案では中国・朝鮮の影響から脱して純日本趣味を現し、これに比肩し得るものとしてはわずかに仁清かあるに過ぎないようです。
そして皿の曲面と模様とはぴったり調和していいようのない軟かな優雅さを出しています。
製作には極めて細心の注意を払い数回に及ぶ厳重な検査があります。
まず染め付けの素地を検査して合格品だけを藩に納め、残りの不合格品は残らず破砕しました。
検査の役人の中には役得としてこれらの不合格品をひそかに着服した者があり、その一部は民間に密売されましたが、それらのなかに極めて優秀なものはなかったことはいうまでもないようです。
色鍋島の優秀なものが製作されたのは江戸文化がようやく爛熟した時代で、当時の絢爛豪華しかも高雅を失わない好みはよくその作品に現れ、鍋島の優雅な形状・模様を通じて元禄から享保(1688-1736)の頃の世相風俗を如実に看取することができます。
【特徴】色鍋島の特徴は素地と図案と色釉にあります。
最も一般的な丸皿を対象としてこれを論じますと、素地は柿右衛門に比べて青味を帯びているのが普通で、伊万里・湖東焼よりも白く、肌は極めて平滑で凹凸は絶対にないようです。
形状と曲面はおそらく木盃に暗示を受けたものらしく、外縁に近いところは曲半径が小さく、底部近くではかなり湾曲が緩やかで曲半径は大きいです。
さらに底面を形づくっているところは再びかなり大きい曲半径となりほとんど平面に近いですが、全体を通じて平面はI個所もなくことごとく快い緩やかな湾曲をなしています。
大きさは三寸皿・五寸皿・七寸皿・一尺二寸皿の四種にほとんど限られます。
高台は他窯のものに比べて著しく大きくかつ高いです。
高台の直径は皿の直径の半分に等しく、高さは直径のほぽ十分の一であります。
高台の外面周囲には多くは櫛手と呼ばれる特殊な模様があり、染め付けで描かれ世に櫛手高台または櫛高台と呼ばれました。
これは当時大川内窯だけに許され他窯にはその使用を厳重に禁じ、ひそかにこれを付けたものは発見次第没収されました。
この櫛高台は非常にていねいに描かれ、整然として一糸乱れずはなはだ快いです。
ほかに七宝繋ぎの高台がありますが、これは櫛高台よりやや初期のものらしいです。
裏模様もまた鍋島の特徴で、多くの場合一二〇度の間隔で三個所に対照的に描かれ、七宝繋ぎが最も普通で椿または牡丹の模様、唐草模様を用いたものもあります。
裏模様は染め付けだけで色絵はほとんど用いないようです。
色鍋島における呉須の色調は地味な青色で非常に鮮明で、常に釉下に用い上絵には絶対に呉須は使われていないようです。
赤は柿右衛門のものに比べて濃くやや紅を帯び、緑および黄釉はややガラスのような光沢があって厚く盛り上がり大変美しい。
(『柿右衛門と色鍋島』『鍋島焼』)

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