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鶴田 純久の章 お話

水金ともいいます。
金液は陶磁器彩飾の仕上げに用いられる上絵具の一種で、主として洋風食器類に多く用いられるがわが国においても九谷焼などの極彩色の器物には古くから使われてきました。
その主成分は油溶性のテルペン(金化合物)で、これに金膜の密着性・耐熱性などを増すためにロジウム・蒼鉛・二ッケル・クロムなど数種の金属を樹脂酸塩の形で加え、これらの混合物を適当な溶剤で薄め、運筆や乾燥などのため適度に調整したものであります。
でき上がった製品は黒褐色のやや粘桐な油状を呈し、これを特殊な細毛筆またはコム印で陶磁器面に模様付けし乾燥後炉の中で摂氏700~800度に焼成すると黄金色燦然とした強固な金膜を生じます。
しかし多孔質の製品に施すと金膜を生じないで紫色となります。
金液にはその用途により陶磁器用・ガラス用があります。
普通に使われているものに赤金・青金・バ二アソユ金・NW金の種類があります。
赤金はその色調が少し赤味を帯び、合金量約一パーセントで標準品とされています。
青金は金のほかに銀を配合したもので緑味を帯びた色調をもちます。
NW金とバ二ッシュ金とは共に赤金より合金量が多く、バ二クソユ金は焼成後金膜面を特殊なこまかい砂で磨き上げて梨地様の深みのある光沢を出すもので、最高級品に使われます。
金液の使用は1830年ドイツのマイセンのキーン(Kühn)に始まるとされています。
金液については1889年(明治二二)以来十数種の特許が登録されましたが、実際にはもっぱらイギリス・ドイツ製品を輸入して使用していましたので、大正初期に第一次世界大戦が起こって輸入が杜絶してしまうと非常に困惑しました。
この時に日本陶器株式会社の石川次郎が初めて水金の工業的製造に成功し、十分にこの危機を救りました。
その後日本金液株式会社もまた優秀品を製出するようになり現在ではすべて国産品が使用されています。

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