白磁・青磁と同軌の言葉で黒い釉の掛かったやきものの意でありますが、主として近来とみに注目を集めている中国の隋・唐代のそれを指す。
隋代に白磁の深い碗がつくられたことは周知のことですが、それとまったく同形の黒釉の掛かったものかおることから、黒磁の出現は少なくとも隋代にはあったと思われます。
鉄を主とした釉で黒または黒褐色を呈し失透気味であります。
窯跡は明らかでないが河南・河北方面のどこかにあったと考えられます。
この黒磁の窯では隋から盛唐にかけて碗をはじめ水瓶・水注・壺など白磁とほぼ同じ器類を産しました。
唐の後半に入る頃からこの黒磁の釉をさらに厚くたっぶりと掛け、その上に藁灰と呼ばれる白濁釉を流し掛けにした黒釉白斑の黒磁が現われます。
壺・水注の類が多いが北京の故宮博物館にあった鼓胴は珍器として有名。
この類の皿一磁は河南省郊県黄道窯をはじめ河南一帯から浹西省にかけて多くの生産地を持っていたようで、やがて宋代に至って磁州系の天目や飴釉に変貌してゆく。