Drumbody,three-colorglaze.Naraperiod,Japan.
正倉院蔵
高さ38.3㎝
この鼓胴は、平安時代後期の永久五年(1117)の正倉院蔵品改めともいうべき「東大寺綱封蔵見在納物戡検注文」に唐楽と呼ばれる舞楽に用いられるものとあり、細腰鼓の一種です。ふつう鼓胴は木製で、陶製のものは珍しく、軟陶のこの鼓胴に皮をつよく張って使用に耐えうるのか否かはわかりません。
素地と施釉について調査報告書は、素地はよく水籔された白色緻密な土が用いられておまだらり、釉はまず白釉を鹿子斑状に散らし、上下にそれぞれ、不整十字形の黄釉を配したのち、全面に緑釉を施したもので、凸帯の各部分には黄釉と緑釉とを交互に塗りわけている、と述べています。唐三彩の鼓胴で管見にふれたものはありませんが、晩唐の黒釉鼓胴は北京の故宮博物院に蔵されています。(矢部)
三彩 鼓胴
Three-color glazed ware: drum body. 8th century. Height 38.3cm.
8世紀
高さ38.3cm 口径21.8cm 胴径10.9cm 底径22.5cm
正倉院
裾拡がりの同形の筒を二つ接合して成形したもので、中央のくびれ部の中心に三条の凸帯を、また両端の拡がった部分に三条と二条の凸帯を繞らしています。素地はよく水された白色緻密な土を用いており、表面はわずかに黄色を帯びています。釉はまず白釉を鹿の子斑状に散らし、上下各四段ずつ、不整十字形の黄釉を配したのち、全面に緑釉を施したもので、凸帯の部分は黄釉と緑釉を交互に塗りわけています。
この鼓胴は永久五年(1117) 『東大寺綱封藏見在納物勘検注文』 に辛樻合入舞装束 但破損 三鼓一 青子筒と記され、唐楽に用いられる細腰鼓の一種です。鼓胴は通常、木製であって、陶製のものは珍しく、三彩釉を施したものは本器のみです。正倉院三彩のうち、この鼓胴のみ輸入説が唱えられたことがありましたが、昭和三十七年度の調査で日本製であることが確定しました。