土師器 墨書人面土器

土師器 墨書人面土器
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鶴田 純久の章 お話
土師器 墨書人面土器
土師器 墨書人面土器

Nara Prefectural Archaeological Museum.Registered as Important Cultural Property.Haji ware: jar with ink drawing of human face. Excavated at Mae-no-ike Site, Osaka. 8th century. Height 14.2cm. Nagoya City Museum.
大阪府東大阪市弥刀変電所前の池遺跡出土
8世紀
高さ14.2cm 口径17.6cm 胴径17.2cm
名古屋市博物館
 やや浅い胴をもった広口の通有な土師器甕形土器の胴に黒々と墨で人面を描いたもので、反対面にもやや表現を異にする人面が描かれています。吊り上がった眉、眼尻を上げたその表現は決して人間の穏やかな顔の表情ではありません。このような墨書人面土器は現在、宮城県から佐賀県まで、日本全域にわたって十三箇所の官衙およびその周辺の遺跡から二十六例出土しています。描かれている対象器物はいずれも鉢あるいは甕類に限られています。顔の表現には共通性があり、太い眉、眉間の狭い両眼、鼻、口、長い耳、そして多くの場合、顎髪を描いています。人面の数は一、二、四面の三種があり、三面あるいは五面以上のものはありません。これらの人面土器は平城宮跡や静岡県伊場遺跡にみられるように、井戸や大溝などの水に関係する場所から出土しており、他の遺跡の場合も河川に関係するものが多いです。これらの人面はけっして戯画として描かれたものではなく、鬼面を表現したものであり、邪鬼を払うための道教系の呪術をその背景に負ったものと考えられています。

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