Sue ware: jar mentioned as “Jar for jüen Medicine”. 8th century. Height: cover 4.3cm., jar 17.9cm.
8世紀
(蓋)高さ4.3cm 底径12.6cm、(身)高さ17.9cm 口径11.7cm 胴径23.5cm 底径13.4cm
正倉院
戎塩とは中国の西北乾燥地帯に産する土塩であり、薬用として用いたものです。壺内にわずかに残っています。蓋裏に 「弘仁二年九月十八日定八斤七両小」 と墨書があり、この年の曝涼時における定量を記しています。
この薬壺は当代の須恵器に通有な短頸壺ですが、身と蓋を別々に焼成しています。蓋は側縁の高い端正な形のもので、やや扁平な宝珠形の紐があります。身は肩の張った奈良時代特有の形態をしており、外に大きく張ったやや高い高台がついています。口縁部は外気味に薄く挽き上げられていますが、このような口縁のつくりは冶葛壺にもみるところであり、正倉院薬壺の製作地以外にはみることのない形です。その祖形は唐三彩のなどに求めることができ、唐風の影響と考えられます。
素地は比較的良質の細緻なもので、轆轤成形も薄手の見事なつくりを示しています。身の肩から下は箟削りによって器面を丁寧に整形しています。蓋の下縁外側に小さい刳りこみがあり、正倉院薬壺全体に共通しています。焼成はきわめて堅緻で灰黒色を呈し、金属的な感を与えています。肩に厚く自然釉がかかり、一部胴に流下しています。
最近、戎塩壺や芒消壺と素地 成形・ 焼成のまったく同様な須恵器が大阪南部の陶邑古窯跡群の光明池地区で多数発見されており、正倉院薬壺類が陶邑窯で焼かれたことがあきらかとなりました。