高さ9.1㎝ 口径36.4㎝ 高台径20.5㎝
箱根美術館
古来、わが国で古伊万里型物と呼ばれている鉢のなかで、特に声価の高いのは五般船文様の独楽形の鉢である。
しかし、現存する作品は極めて少ない。
五般船の呼称は、見込に三般、外側に二般、合わせて五般の蘭船が描かれていることによるもので、見込側面には八人のオランダ人があらわされ、外側二方には二人のオランダ人を内にあらわした赤玉文が描かれ、この作品の構図の主題をなしている。
赤、黒、緑、紫に金彩を加えて、ほぼ全面を染付と上絵具で加飾しているが、それらの細やかな文様が的確な筆致で整然と描かれているところに、この種の古伊万里型物の特色がある。
また、外側に染付と赤、金でのびやかに描かれた唐草風の牡丹文は、なかなか古格を示している。
高台内に目跡が三つ残り、中央に赤で縁どりした金彩で「寿」の宇をあらわしている。
口縁にめぐらされた金彩はほとんど剥落している。
五般船文様は、十七世紀におけるオランダとの交易によって生まれた独特のパターンではあったが、輸出用と見るよりも国内向けの特製品であったのではなかろうか。