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鶴田 純久の章 お話
珠洲 四樹文壺
珠洲 四樹文壺

Suzu ware: jar with four trees design.
Excavated at Machino-machi, Wajima-shi, Ishikawa. 13th century. Height 39.2cm. Registered as Important
Cultural Property.
伝石川県輪島市町野町金蔵出土
13世紀
高さ39.2cm 口径17.3cm 胴径30.9cm 底径11.5cm
重要文化財
 短いやや外反する口頸部の先端を肥厚させた撫で肩の中形壺です。鉢形の底部つくり、その上から紐土巻き上げづくりで成形したのち、器面を縦に俺を用いて平滑に削って整形しています。13世紀後半代の典型的な中型壺です。文様は四方分割によって、四面にそれぞれ異なる絵を描いています。一面にはこの時期に多用される櫛目手法を用いて斜格子文を描いています。他の三面には四本の樹文を描いていますが、第四面には二本の樹文を並べています。樹文は左から右廻りに配列しています。いずれも細い金属様の施文具を用いています。
 左端の一樹は松に懸かれる藤を、その右の一樹は樹幹から伸びる枝の先端に葉脈を明瞭に表した三枚の葉を一単位とする繁った枝葉を描き、右端の葉の間から伸びた茎の先に開いた花弁を描いています。カラタチではないかと思われます。次の一面に並べて描かれた二樹のうち、左の一樹は細い線刻で樹幹から垂れ下がる枝を、右の一樹は左と同種と思われる枝折れの樹相を表現している。当時、流行したやまと絵に描かれる松に懸かれる藤は春を、カラタチは夏を表しており、落葉 枝折れの樹が秋冬を示すことは明らかです。
 このようにみますと、この刻画文は全体を通じて四季の風物を描いたものであり、王朝風の絵画手法の名残りをみることができます。

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