Picture of 鶴田 純久の章 お話
鶴田 純久の章 お話

Tokunyu (Raku VIII, 1745-74): cylindrical tea bowl, Black Raku
Mouth diameter 9.0cm
Raku Museum
高さ9.4cm 口径9.0cm 高台径 4.3cm
樂美術館
 内箱蓋表に「黒筒茶 楽吉左衛門」 と記した共箱に収まっています。導入は宝暦十二年十八歳の時、長入より代を譲られて吉左衛門を襲名しましたが、明和七年には二十六歳で弟の惣次郎(了入)に代を譲って隠居し、三十歳で歿しました。したがって吉左衛門を名乗って作陶したのはわずか九年間であり、その作品は極めて少なく、またそれほど作為の強いものではありません。
 口縁を内に抱え込ませた小振りの筒形茶碗で、やはり長入の作行きと似ています。胴の一方を引き締め、腰から高台際にかけて数か所、面取風の平らな箟目を加えています。高台はやや歪み、内部の削込みが一方に寄って片薄になり、中央に円状の兜巾を削り出しています。
 見込には茶溜りが小さく深く削り込まれ、高台脇に楽字の印を捺しています。総釉で、長入とよく似た漆黒の釉が均等にかかり、高台畳付に目跡が残っています。得入としては上作で、典型作といえるのではないでしょうか。

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