利休の佗び茶をさらに一歩進めて、佗びに徹することを求めた宗旦は、好み物においてもその主張を適えるべく、一閑張を好んで用いた。真塗の酷しさに対し、紙の柔らかさを生かしたこの塗物は、草庵の茶風にぴったり融合するものがあることはいうまでもない。
宗旦は台子をはじめ茶器から菓子器に至るまで、いろいろと一閑の好みを発し、香合でもこの四方のほか兜巾・桃・三日月など数種に及んでいる。この四方の場合、蓋は深く身に被り、蓋裏に宗旦の花押が朱漆書され、身の底には中央に宗旦が「一閑」と書き、右と左に覚々斎が「旦判」と花押を書き分けている。箱も覚々斎で、井上友珉の所持を証している。
【寸法】 高さ:3.0 蓋径5.5